緊急避妊薬の調剤

オンライン診療の適切な実施に関する指針

ⅸ オンライン診療においては、初診は「かかりつけの医師」が行うこと、直接の対面診療を組み合わせることが原則であるが、以下の診療については、それぞれに記載する例外的な対応が許容され得る。

  • ・ 禁煙外来については、定期的な健康診断等が行われる等により疾病を見落とすリスクが排除されている場合であって、治療によるリスクが極めて低いものとして、患者側の利益と不利益を十分に勘案した上で、直接の対面診療を組み合わせないオンライン診療を行うことが許容され得る。
  • ・ 緊急避妊に係る診療については、緊急避妊を要するが対面診療が可能な医療機関等に係る適切な情報を有しない女性に対し、女性の健康に関する相談窓口等(女性健康支援センター、婦人相談所、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを含む。)において、対面診療が可能な医療機関のリスト等を用いて受診可能な医療機関を紹介することとし、その上で直接の対面診療を受診することとする。
    例外として、地理的要因がある場合、女性の健康に関する相談窓口等に所属する又はこうした相談窓口等と連携している医師が女性の心理的な状態にかんがみて対面診療が困難であると判断した場合においては、産婦人科医又は厚生労働省が指定する研修を受講した医師が、初診からオンライン診療を行うことは許容され得る。
    ただし、初診からオンライン診療を行う医師は一錠のみの院外処方を行うこととし、受診した女性は薬局において研修を受けた薬剤師による調剤を受け、薬剤師の面前で内服することとする。
    その際、医師と薬剤師はより確実な避妊法について適切に説明を行うこと。加えて、内服した女性が避妊の成否等を確認できるよう、産婦人科医による直接の対面診療を約三週間後に受診することを確実に担保することにより、初診からオンライン診療を行う医師は確実なフォローアップを行うこととする。

注 オンライン診療を行う医師は、対面診療を医療機関で行うことができないか、再度確認すること。また、オンライン診療による緊急避妊薬の処方を希望した女性が性被害を受けた可能性がある場合は、十分に女性の心理面や社会的状況にかんがみながら、警察への相談を促すこと(18 歳未満の女性が受けた可能性がある性被害が児童虐待に当たると思われる場合には児童相談所へ通告すること)、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター等を紹介すること等により、適切な支援につなげること。さらに、事前に研修等を通じて、直接の対面診療による検体採取の必要性も含め、適切な対応方法について習得しておくこと。
なお、厚生労働省は、初診からのオンライン診療による緊急避妊薬の処方に係る実態調査を適宜行う。また、研修を受講した医師及び薬剤師のリストを厚生労働省のホームページに掲載する。

(5) 薬剤処方・管理

①考え方

医薬品の使用は多くの場合副作用のリスクを伴うものであり、その処方に当たっては、効能・効果と副作用のリスクとを正確に判断する必要がある。このため、医薬品を処方する前に、患者の心身の状態を十分評価できている必要がある。特に、現在行われているオンライン診療は、診察手段が限られることから診断や治療に必要な十分な医学的情報を初診において得ることが困難な場合があり、そのため初診から安全に処方することができない医薬品がある。また、医薬品の飲み合わせに配慮するとともに、適切な用量・日数を処方し過量処方とならないよう、医師が自らの処方内容を確認するとともに、薬剤師による処方のチェックを経ることを基本とし、薬剤管理には十分に注意が払われるべきである。

②最低限遵守する事項

ⅰ 現にオンライン診療を行っている疾患の延長とされる症状に対応するために必要な医薬品については、医師の判断により、オンライン診療による処方を可能とする。患者の心身の状態の十分な評価を行うため、初診からのオンライン診療の場合及び新たな疾患に対して医薬品の処方を行う場合は、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等の関係学会が定める診療ガイドラインを参考に行うこと。
ただし、初診の場合には以下の処方は行わないこと。

  • 麻薬及び向精神薬の処方
  • 基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬品(診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤)の処方
  • 基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方また、重篤な副作用が発現するおそれのある医薬品の処方は特に慎重に行うとともに、処方後の患者の服薬状況の把握に努めるなど、そのリスク管理に最大限努めなければならない。

ⅱ 医師は、患者に対し、現在服薬している医薬品を確認しなければならない。この場合、患者は医師に対し正確な申告を行うべきである。

③推奨される事項

医師は、患者に対し、かかりつけ薬剤師・薬局の下、医薬品の一元管理を行うことを求めることが望ましい。

④不適切な例

ⅰ 患者が、向精神薬、睡眠薬、医学的な必要性に基づかない体重減少目的に使用されうる利尿薬や糖尿病治療薬、美容目的に使用されうる保湿クリーム等の特定の医薬品の処方を希望するなど、医薬品の転売や不適正使用が疑われるような場合に処方することはあってはならず、このような場合に対面診療でその必要性等の確認を行わず、オンライン診療のみで患者の状態を十分に評価せず処方を行う例。

ⅱ 勃起不全治療薬等の医薬品を、禁忌の確認を行うのに十分な情報が得られていないにもかかわらず、オンライン診療のみで処方する例。

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づき緊急避妊薬の調剤が対応可能な薬剤師及び薬局の一覧の公表について

1 公表方法

  • (1)薬剤師等の一覧は、研修通知に基づき実施した都道府県薬剤師会が、別添1の様式で作成し、厚生労働省の以下の提出先に電子媒体で提出すること。
  • (2)厚生労働省は、(1)の内容を踏まえ、患者が緊急避妊薬の調剤を受ける薬局を選択するに当たって必要な情報を厚生労働省のホームページにおいて公表すること。

2 公表された薬剤師及び薬局における留意事項

  • (1)公表された薬剤師及び薬局においては、薬剤師が「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和元年7月 31 日付け医政発 0731 第7号厚生労働省医政局長通知。)(以下「指針」という。)に基づき調剤等を行うために、緊急避妊薬の備蓄、患者のプライバシーへの十分な配慮、緊急避妊薬を服用するための飲料水の確保等に対応できるような体制を整備すること。
  • (2)指針に基づき薬局で調剤等を行う場合は、薬剤師等の一覧に掲載された研修を修了した薬剤師が対応すること。
  • (3)薬局は、当該薬局又は当該薬局に所属する薬剤師について、薬局及び薬剤師の一覧に掲載されている情報に変更があった場合には、別添2の様式を用いて、薬局が所在する都道府県の都道府県薬剤師会に速やかに届け出ること。都道府県薬剤師会においては、届出を受理した後、1(1)の提出先に当該内容を電子媒体で提出すること。

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を踏まえた緊急避妊に係る診療の提供体制整備に関する薬剤師の研修について

1 緊急避妊薬を調剤する薬剤師に対する研修の内容については、令和元年度厚生労働行政推進調査事業費補助金「かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究」(研究代表者 安原眞人(帝京大学薬学部 特任教授))(以下「調査研究」という。)において研修プログラムを作成中であるが、当該研修については、以下の内容を踏まえて実施すること。また、実施に当たっては、調査研究において作成された資材を活用すること。

  • (1)オンライン診療に基づき緊急避妊薬を調剤する薬局での対応、調剤等について
  • (2)月経、月経異常、ホルモン調整機序その他女性の性に関する事項
  • (3)避妊に関する事項、緊急避妊薬に関する事項

研修は、公益社団法人日本薬剤師会及び各都道府県薬剤師会において、都道府県ごとに実施することとし、実施に当たっては、実施地域の医師会及び産婦人科医会と連携して対応すること。なお、実施される都道府県の薬剤師の希望者が参加できるように最大限配慮すること。

3 研修を受講した薬剤師及び従事先の薬局に関しては、オンライン診療に基づき緊急避妊薬の調剤が対応可能な薬剤師及び薬局の一覧として厚生労働省のホームページに公表予定であり、研修実施の際に受講した薬剤師等の情報作成をお願いすることとしたいが、具体的な公表方法等の手続に関しては別途通知すること。

避妊について(メモ)

今現在最も有効性のある避妊方法は、妊娠経験がない場合は低用量ピル。妊娠経験がる場合はCu-IUDの装着が推奨されている。

これらを使用せず、UPSI(意図しない性行為)が行われた場合に緊急避妊薬を服用する。

  • コンドーム・・・精子の子宮内への侵入を防ぐ(阻止率87%)。装着時の不具合や破損で効果なし。日本の8割がこれ。
  • 性交中断法・・・膣外に射精。射精前からの漏れ出しで効果不十分。日本の2割がこれ。
  • リズム法(オギノ式)・・・安全日を特定して性行為。安全日はない。
  • 低用量ピル(=低用量OC=LEP)・・・低用量の卵胞ホルモンと黄体ホルモンで排卵するのを抑える。14歳未満は骨端線閉鎖リスクのため、14歳~閉経(50歳以下、40歳以上慎重投与)の間で使用する。阻止率93%。服薬中止後約3か月で排卵再開。
  • 子宮内避妊具(Cu-IUD)・・・子宮内に装着し、銅イオンを持続的に放出させて着床を阻害。UPSI後5日以内に挿入でも可。1回の装着で2~5年効果持続(1回5万円)。妊娠経験がある場合に使用。避妊成功率99%。
  • 子宮内避妊具(IUS)・・・子宮内に装着し、黄体ホルモンを持続的に放出させて着床を阻害。後はCu-IUDと同じ。
  • 緊急避妊薬(LNG、ECP)・・・ECは緊急避妊法の略。LNGはレボノルゲストレルの略。LNGの妊娠阻止率が約90%で100%ではない。妊娠を阻止できたかどうかはすぐにはわからない→妊娠反応(尿検査陽性)は2週間後、生理による出血は3~7日後。

薬局来局時の対応(オンライン診療)

重要なことは、本人確認、1錠を面前で服用させる、性交後72時間以内(遅くなるほど阻止率↓)、約3週間後に対面診療するように促すこと。

性犯罪や性暴力被害が疑われる場合は、ワンストップ支援センターを紹介する。

研修終了薬剤師のみが対応することができる。研修終了薬剤師が都道府県をまたいで移動する場合は変更届を提出。

緊急避妊薬の対面診療及びオンライン診療可能な医療機関や医師の確認はこちらから。

オンライン診療における緊急避妊薬の調剤で用いる関連文書

以下のような場合は対応不可

  • 本人確認(顔写真付きの証明書)ができない場合
  • 本人以外が来局した場合
  • 本人が面前で服用できないと申しでた場合
  • 処方箋に緊急避妊薬以外の薬剤が一緒に記載されている場合。→処方医に紹介して緊急避妊薬1錠のみの処方としてもらう。
  • 研修終了薬剤師が不在の場合

なお、緊急避妊薬は以前のバイアグラ等のように全額自費処方扱い(保険適応外)になるため、あらかじめ請求額を設定しておく。(相場は先発で7000円~8000円)

参考文献

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