便秘の薬一覧

分類 成分名 商品名 規格・剤形・補足
浸透圧性下剤(塩類下剤) 酸化マグネシウム 酸化マグネシウム
重カマ
マグミット
末、細粒、錠200㎎/250mg/300mg/330mg/400mg/500mg、胃疾患、尿路シュウ酸Ca結石発生予防適応有
硫酸マグネシウム 硫酸マグネシウム
硫酸ナトリウム配合 人工カルルス塩 散(NaHCO3、NaCl、K2SO4も含有)
マクロゴール4000配合 モビコール 配合内用剤(LD/HD)、2歳~
浸透圧性下剤(糖類下剤) D-ソルビトール D-ソルビトール 原末、内用液
ラクツロース ラグノスNF
モニラック
経口ゼリー
膨張性下剤 カルメロースNa バルコーゼ 顆粒
カルメロースNa 原末
浸透性下剤(その他) ジオクチルソジウムスルホサクシネート ビーマス
ベンコール
配合錠
小腸刺激性下剤 ヒマシ油
加香ヒマシ油
ヒマシ油
加香ヒマシ油
大腸刺激性下剤 センナ センナ
アジャストA 錠40㎎
ヨーデルS 糖衣錠80mg
アローゼン 顆粒0.5g/1g
センノシド プルゼニド 錠12mg
センノサイド「EMEC」 顆粒8%
ダイオウ ダイオウ
ダイオウ配合 セチロ 配合錠
ピコスルファートNa ラキソベロン 錠2.5mg、内用液0.75%10ml/100ml、1ml=15滴
スナイリン DS1%
ピコスルファートNa 錠2.5mg、Cap2.5mg、内用液0.75%10ml、DS1%
ピコダルム 顆粒1%d>
アロエ アロエ
炭酸水素Na・無水リン酸二水素Na 新レシカルボン 坐剤
ピサコジル テレミンソフト 坐剤
Cl-チャネルアクチベーター ルビプロストン アミティーザ Cap12μg/24μg
グアニル酸シクラーゼC受容体アゴニスト リナクロチド リンゼス 錠0.25mg
胆汁酸トランスポーター阻害薬 エロビキシバット グーフィス 錠5㎎
末梢性μオピオイド受容体拮抗薬 ナルデメジン スインプロイク 錠0.2mg
抗コリン薬
浣腸 グリセリン グリセリン
グリセリン浣腸
液30ml/60ml/120ml/150ml

便秘の薬の使い方

作用機序 製剤名 推奨度
膨張性 オオバコ B
バルコーゼ(カルメロースナトリウム)
浸透圧性 酸化マグネシウム B
モビコール(ポリエチレングリコール) A
モニラック(ラクツロース) B
上皮機能変容薬(分泌型) アミティーザ(ルビプロストン) A
リンゼス(リナクロチド) A
SGLT1阻害薬
湿潤性と刺激性の合剤 ビーマス(DSS+カサンスラノール) C
大腸蠕動刺激性 ラキソベロン(ピコスルファートNa) B
テレミン(ピサコジル) B
プルゼニド(センノシド) C
アローゼン(センナ) C
新レシカルボン(炭酸水素Na他)
エロビキシバット グーフィス(エロビキシバット) B
選択的5-HT4受容体刺激 Prucalopride A
Velusetrag B
末梢性μ受容体刺激 スインプロイク(ナルデメジン) B

第一選択は非刺激性下剤の中でも、浸透圧下剤。酸化マグネシウムは高マグネシウム血症の危険があり高齢者に慎重投与のため、新しく出てきたモビコールやラクツロースがその地位を交代しようとしている。

合剤のビーマスは刺激性作用もあるが、刺激性はセンノシドの10分の1と極めて弱く、便を柔らかくする効果は浸透圧性下剤と同程度と言われ、こちらも第一選択の候補となっている。

第二選択にアミティーザ(嘔気、妊婦に注意)やリンゼス(腹痛があれば)。

第三選択にグーフィス、リンゼスの食後投与。

これでも出ないようなら刺激性下剤のレスキュー使用。

排便は一般に朝行われる習慣があるので、下剤は就寝前投与が多い。

刺激性下剤は、宿便除去、排便習慣をつけるためのもので短期間使用が原則(長期使用は腸管壁神経叢を壊してしまうため)。

意外と、直腸に便があっても便意が起こらず、便が出ないケースも多いため、こうしたケースには直腸を刺激し、かつ水分を分泌するグーフィスは適任といえる。

(図:アミティーザメーカーパンフより)

浸透圧性下剤(塩類下剤)

腸管内で吸収されにくいため、腸内に留まり浸透圧を上げることで水分を吸引し、緩下作用を示す。多量の水分とともに服用がベスト。習慣性がなく長期間の投与も可。

重質酸化マグネシウム末は、5.0gの容積が30ml以下のもの、平均粒子径が大きい。軽質酸化マグネシウム末は、5.0gの容積が30ml以上のもの、平均粒子径が小さい。

平均粒子径が小さいと粒子が軽いため、ふわふわしてしまい、結果的にかさが大きくなる。平均粒子径が大きいと粒子が重いため規則正しく配列し、結果かさが小さい。よって、重質酸化マグネシウムのほうがかさばらず、測定するのには適していると言える。

一方、水を含んだ場合は考え方が異なる。平均粒子径が小さいものは水を含むと体積がぎゅっと縮まるが、平均粒子径が大きい物は水を含むとばらばらになりやすい。砂と砂利のようなもの。口の中で広がらないようにするためには粒子径の小さい軽質酸化マグネシウムのほうがいいのかも。

マグラックスやマグミットは、水を加えると10秒前後で崩壊する上、崩壊後の平均粒子径はマグミットが56μm、マグラックスが42μmと小さい、そのため、少量の水と混ぜるとペースト状になる(まとまりやすい)ため、口の中で広がらず、飲み込めない人にも使いやすい。

昔は、酸化マグネシウム=軽質、重質酸化マグネシウム=重質だったみたいだが、現在は、ただの酸化マグネシウムといったら重質のことを指す。軽質も販売はされているがマイナー。

(ヨシダ製薬のHPより)

MgO+2HCl→MgCl2+H2O

でまずは胃酸を中和、その代謝物のMgCl2+膵液のNaHCO3→Mg(HCO3)2となり、最終的にMgCO3となる。つまり胃酸と膵液が必要。

中間生成物のMg(HCO3)2(重炭酸マグネシウム)と最終生成物のMgCO3(炭酸マグネシウム)が浸透圧を上げて水分を腸内へ引き寄せる。

また、マグネシウムはシュウ酸と結合して尿路結石の生成を抑制する作用もある。

作用機序的に、制酸剤との併用は効果が弱まる。

  • カマ、マグラックス(酸化マグネシウム)・・・長期・大量投与による高カルシウム血症(悪心・嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠等)に注意→酸化マグネシウムは血液をアルカリ性にし、腎でのCa再吸収が増加するため。高カルシウム血症のリスクファクターは加齢と腎機能障害。酸化Mg細粒83%と原末換算表
  • モビコール(マクロゴール・ナトリウムカリウム配合剤)・・・1日1~3回。慢性便秘症。浸透圧により腸管内の水分量を増加させる(同じ浸透圧便秘薬の塩類下剤との違いは、服用した水分を腸内へそのまま届け、それを高い浸透圧で維持して排便を促す作用やそのおかげで便が軟化、便容積が増大することで、生理的に大腸の蠕動運動が活発化=腸を動かす作用があるとされる)。
    腸内の電解質バランスの維持、便中浸透圧の保持のため、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウムが添加されている→そのため最初に小分けにしてから服用することは非推奨(比率の問題)で、溶かしてから小分けが理想。
    同じくEAファーマから出ているモビプレップ(大腸検査前に使用)は、モビコールにアスコルビン酸を加えてさらに浸透圧を高めている。モビコールに含有している炭酸水素ナトリウムとアスコルビン酸が反応しないように、モビプレップでは炭酸水素ナトリウムの代わりに硫酸ナトリウムを含有する。
    モビプレップは、二リットルの水を入れて調整し、便が透明になるまで服用する。半分の量の水かお茶を服用しなければならないので、モビプレップ500ml→水250ml→モビプレップ500ml→水250mlのような感じで飲んでいく感じになる。なお、途中で便が透明になれば二リットルすべてを服用する必要はない。

重カマ「ヨシダ」原材料変更に伴う物性変更(R4.6)

モビコール(補足)

モビコールを水に溶かす量は、1包あたり約60ml、2包あたり約120mlが目安で、溶かした後すぐに服用できない場合は冷蔵庫で保管する。数回に分けて服用しても構わないがその日中に飲み切る。

味など(しょっぱみ=塩味)が気になって服用しずらい場合は、水以外の飲料に溶かして服用することもできる。

飲料名 相性 甘味等
-
牛乳★★★-
お茶-
紅茶★★-
コーヒー-
リンゴジュース★★★★★
オレンジジュース★★★★
スポーツドリンク★★★★★
乳酸菌飲料★★★★★
ヨーグルト飲料★★★★
ミルクココア★★★★〇・温
コーンスープ★★★★
お味噌汁★★★★

※相性★が多いほど塩味が感じにくい。温かいものは30-40℃に冷まして使用。(以上、EA指導せんより抜粋)

浸透圧性下剤(糖類下剤)

塩類下剤と同様の機序に加えて、腸内細菌が薬剤を分解して生成する有機酸による蠕動運動刺激作用も併せ持つ

  • モニラック(ラクツロース)・・・便秘関連適応:①産婦人科術後の排ガス・排便の促進、②小児における便秘の改善
  • ラグノス(ラクツロース)・・・1日2回。慢性便秘症、高アンモニア血症に伴う症候の改善、産婦人科術後の排ガス・排便の促進。腸管内への水分分泌を促す。腸管の蠕動運動を亢進させる。

浸透圧性下剤(その他)

便の表面張力を下げることで水分吸収を容易にし、軟化・湿潤させて排便を促す。ビーマスには、大腸を刺激し、蠕動運動を亢進する成分も配合されている。

  • ビーマス(カサンスラノール・ジオクチルソジウムスルホサクシネート)・・・適応:①便秘症、②腹部臓器検査時又は手術前後の腸管内容物の排除

膨張性下剤

水分を吸収しつつ便に浸透することにより、腸の内容物を膨張させ、大腸を刺激し排便を促す。

  • バルコーゼ(カルメロースナトリウム)・・・適応:便秘症

大腸刺激性下剤

大腸粘膜を刺激することで排便を促す。効果発現までに通常6~8時間かかるため、朝の排便を期待する場合は就寝間への服用が良い。連用にて大腸黒皮症をきたす。

  • ラキソベロン(ピコスルファートNa)・・・適応:①各種便秘症、②術後排便補助、③造影剤投与後の排便促進。ラキソベロン液は1本が150滴。
  • テレミン(ピサコジル)・・・適応:①便秘症、②消化管検査時又は手術前後における腸管内容物の排除。剤形:坐薬のみ
  • プルゼニド(センノシド)・・・適応:便秘症。大腸で腸内細菌の作用によりレインアンスロンを生成→大腸運動促進。尿の赤変あり。
  • アローゼン(センナ)・・・適応:便秘(ただし、痙攣性便秘は除く)、駆虫剤投与後の下剤
  • 新レシカルボン(炭酸水素Na他)・・・適応症:便秘症。剤形:坐薬のみ。直腸内で徐々にCO2を発生し、粘膜を刺激→腸運動を亢進させる。主に習慣性便秘に使用。1個使用し30分経っても排便がなければ2個目を追加可能、さらに6時間以上たっても排便がなければ3個目を追加可能。

クロライドチャネルアクチベーター

慢性便秘症の効能を有するクロライドチャネルアクチベーター。

小腸粘膜上皮細胞のClC-2クロライドチャネルを活性化し、腸管内への水分分泌を促進し、便を軟らかくし、腸管内の輸送を高めて排便を促進。初回投与24時間以内に約60~75%の患者で自発排便が認められ、便の硬さや便秘の伴う症状を有意に改善する。

腸管の水分分泌を担う塩化物イオン(クロライドイオン)が関与。粘膜上皮細胞内の基底膜側にあるNa-K-2Cl共輸送体などを介して粘膜上皮細胞内に取り込まれたクロライドイオンは、小腸上皮頂端膜(腸管内腔側)に存在するタイプ2クロライドイオンチャネル(ClC-2)を介して腸管内腔に移動する。それに伴い、ナトリウムイオンも受動的に腸管内腔に移動する結果、腸管内腔に水が分泌される。

ルビブロストンは小腸上皮頂端膜に存在するClC2を活性化することで、腸管の水分分泌を促進。便を軟らかくして腸管内での輸送性を高め、排便を促進する。

長期にわたり投与しても改善効果を維持することが確認されている。

適応症は、器質性便秘をのぞく慢性の便秘症。妊婦とその可能性がある婦人、授乳婦に対する投与は禁忌

  • アミティーザ(ルビプロストン)・・・適応:慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)

下記のリンゼスの作用機序と似ているので、図に一緒にまとめてみた。

共にCl-を腸管腔に出すことで、受動的に水を腸管腔へ引き寄せる作用がある。Cl-チャネルは幾つか種類があり、その中のClCチャネルをアミティーザが、CFTRを間接的にリンゼスが活性化する。

グアニル酸シクラーゼC受容体アゴニスト

腸粘膜上皮細胞に発現しているGC-C受容体に局所的に結合する。GC-C受容体を活性化することにより、細胞内のサイクリックGMP(cGMP)濃度を増加させ、腸管分泌並びに腸管輸送能を促進させる。

更に、リナクロチドは、ストレスや大腸炎によって引き起こされる大腸痛覚過敏(腹痛・腹部不快感)を抑制する。

リナクロチドによるこれらの大腸機能促進作用及び痛覚過敏改善作用が、IBS-C における排便異常並びに腹痛/腹部不快感の改善に寄与していると考えられる。

  • リンゼス(リナクロチド)・・・適応:IBS(便秘型過敏性腸症候群)。なかでも便秘が優位な便秘型IBSに。1日1回食前(食後投与は、食前投与に比べBSFSが高まり、下痢の発現率が高くなる))。夜はストレスにさらされないので朝が推奨。苛酷試験で規格の逸脱が認められたため、防湿・乾燥機能を持つアルミ包装により品質保持を図っているため、服用直前に取り出し、一包化や半錠には適していない。

胆汁酸トランスポーター阻害剤

エロビキシバットは回腸末端部の上皮細胞に発現している胆汁酸トランスポーター(IBAT)を阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制することで、大腸管腔内に流入する胆汁酸の量を増加させる。

胆汁酸は、大腸管腔内に水分を分泌させ、さらに消化管運動を促進させる為、本剤の便秘治療効果が発現すると考えられる

コレステロールが胆汁の原料となることから、胆汁酸の再吸収を抑制することは、胆汁酸トランスポーター阻害剤はコレステロールを減少させることができるのではと考えられている。

  • グーフィス(エロビキシバット)・・・適応:慢性便秘症。食前、1日1回2錠。便秘に新規で投与することが出来ないため、最初の1回はカマ等を出してから切り替えるとよい。食前投与であればいつ服用してもよいが、初回自発排便までの時間の中央値が5.2時間なのと、胆汁酸がでなければ効果がないため、食前とはいえ服用後の食事(牛乳でもOK)は必要なので、朝を食べない人等は、自分の生活スタイルに合わせたタイミングで服用する。

胆汁酸の大腸における作用

  • 肝臓で作られた胆汁酸は、食事に伴って分泌されるホルモン(コレシストキニンやセレクチン)の作用にて、胆のうから胆管を経て十二指腸へ分泌され、脂肪酸の消化吸収にかかわったのち、小腸下部の回腸まで移動し、約95%が受動的吸収と回腸末端にある胆汁酸トランスポーター(IBAT)により再吸収され、門脈を介して肝臓に回収されて再利用される。一方、回収されなかった約5%の胆汁酸は回腸を通過して、大腸に流入する。
  • 大腸内に流入した一次胆汁酸は、腸内細菌の7α-デヒドロゲナーゼにより、デオキシコール酸やリトコール酸といった二次胆汁酸に変換され、デオキシコール酸は結腸で再吸収されて胆汁酸プールに入り再利用、リトコール酸は腸管からは吸収されず糞便中に排泄される。
  • 大腸には、胆汁酸受容体であるTGR5(膜貫通Gタンパク質共役型受容体5)の存在が確認されている。このTGR5受容体に結合すると、cAMPが生成され、CFTR(嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子)が活性化し、Cl-wo分泌、傍細胞経路によりNa+、H2Oが分泌される。その結果、大腸内へ水分分泌が促される。水分分泌作用
  • また、TGR5受容体の結合により、5-HTが腸壁側に放出される。5-HTは腸管神経叢内の内在性一次求心性神経であるIPANを活性化する。これにより介在ニューロンを介して口側、肛門側それぞれの運動ニューロンが活性化され、口側ではAchなどが分泌され収縮を起こし、肛門側ではNOなどが分泌されて弛緩する。大腸蠕動運動の亢進

(引用元:持田株式会社、知って得する胆汁酸より)

末梢性μオピオイド受容体拮抗薬

消化管のオピオイド受容体に結合し、オピオイド鎮痛薬に拮抗することによりOIC(オピオイド誘発性便秘症)を改善する。

OICの定義は、オピオイド治療開始時、排便の習慣やパターンに変化(排便頻度の低下、いきみを伴うようになる、残便感、排便習慣に苦痛を感じる)が現れること。

多くのオピオイド鎮痛薬(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル等)の鎮痛作用は、主に中枢のμオピオイド受容体を介して発現する。

末梢性μオピオイド受容体拮抗薬は、中枢におけるオピオイド鎮痛薬の作用を阻害しにくいようにデザインされたOICである。

  • スインプロイク(ナルデメジン)・・・モルヒナン骨格を有し、血液脳関門の透過性を低下させる目的で側鎖を付加。1日1回好きな時間帯に1錠服用。オピオイドで治療を続けている間は毎日服用するが、治療をやめたときには服用は中止する。副作用の主なものは下痢、腹痛。

抗コリン薬

痙攣性便秘のみに使用。

  • ブスコパン(ブチルスコポラミン)・・・便秘関連適応:痙攣性便秘
  • ロートエキス(-ヒヨスチアミン、アトロピン、スコポラミン)・・便秘関連適応:痙攣性便秘。ロートエキスに含まれている主成分l-ヒヨスチアミン、アトロピン及びスコポラミンは、抗コリン作用を示し、アトロピンは迷走神経刺激、 食物刺激、ガストリン又はヒスタミンによる 胃酸又はペプシンの分泌を抑制するほか、 抗ストレス胃潰瘍作用、胃細胞保護効果、小腸運動及び 腸液分泌抑制作用、鎮痛作用があることが知られている。 一方、スコポラミンには血圧降下作用及び鎮けい作用 が認められている。

浣腸

便秘について

便秘の病理

便秘の診断基準としては、以下の6項目のうち、2項目以上を満たすことである。

  • 便形状:排便の4分の1超の頻度で、兎糞状便または硬便(BSFSでタイプ1か2)である。
  • 排便頻度:自発的な排便回数が、週に3回未満である。
  • 怒責:排便の4分の1超の頻度で、強くいきむ必要がある。
  • 残便感:排便の4分の1超の頻度で、残便感を感じる
  • 直腸肛門の閉そく感・困惑感:排便の4分の1超の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある。
  • 用手的介助:排便の4分の1超の頻度で、用手的な排便介助が必要である。

慢性の診断基準としては、6か月前から症状があり、最近3か月間は上記の基準を満たしていること。ただし、「日常診療」においては、患者を診察する医師の判断にゆだねる。

種類 原因 改善法
弛緩性便秘 大腸全体が弛緩することで大腸の運動機能が低下することによる。高齢者、常習便秘者に多い。 食物繊維の多い食物をとる
痙攣性便秘 ストレスなどによる副交感神経の緊張による。過敏性腸症候群(便秘型IBS)の一つ。 ストレスをためない。よく睡眠をとること。
習慣性便秘 排便の習慣が乱れたために、直腸が収縮しにくいことによる 規則的な排便習慣をつける。

慢性便秘は原因がはっきりしている「器質性便秘(直腸の形状・形態に異常がある)」「痙攣性便秘」及び「薬剤性便秘」と、原因がはっきりしていない「便秘型IBS」及び「機能性便秘」にわけられる。

「便秘型IBS」では、腹痛・腹部不快感が特徴であり、器質的疾患を除外するための下記アラームサインに気をつける。

  • 50歳以上
  • 大腸器質的疾患の既往歴または家族歴
  • 急激な体重減少
  • 発熱、関節痛、皮疹
  • 粘血便や便潜血陽性
  • 夜間就寝中の症状発現

「機能性便秘」の患者の約4割が「便秘型IBS」の診断基準に当てはまる。「便秘型IBS」の患者の約9割が「機能性便秘」の症状を有する。

便秘型IBSでは大腸の蠕動運動は正常で排便は毎日あるものの、便が硬くて排出ができないことも特徴。機能性便秘は直腸に器質的な問題はないが、腹筋・骨盤底筋群の筋力低下や直腸知覚低下などが原因となっている。

つまり、アラームサインに該当しないもので、便秘症状があれば機能性便秘で、その中で腹痛、腹部不快感があれば便秘型IBSということになる。異常がないのにもかかわらず、主にストレスにより症状が発現する点において、機能性ディスペプシアにすごくよく似ている。根本治療もストレスの除去である。

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