がんの症状と治療

大分書きかけ。副作用は各添付文書で確認。

がん原遺伝子ががん遺伝子に変化し、がん細胞ができると、指数関数的に増え、画像検査で見つかる直径1cmになるまで約10年かかる。

がん細胞は最初に発生した場所(原発巣)から、基底膜を破って湿潤し、血行性転移(血管の流れに乗って広がる)、リンパ行性転移(リンパ管のリンパ液に乗って広がる)、播種(臓器からがん細胞が剥がれ落ちる)の3パターンで他の臓器へと転移する。

そのため、がんが最初に出来た原発巣を外科的に除去しても、原発巣が100万個くらいのがん細胞になった時にはすでにもう、原発巣の近く(局所転移、領域転移)や遠く(遠隔転移)へ転移していることも多い。

がん細胞が遠隔転移を引き起こす際には、次のような現象を起こすと考えられている。

  • 周囲の組織との結びつきを失い、剥がれやすい状態になる。・・・細胞と細胞の間の接着因子と呼ばれるタンパク質の発現を低下させる。
  • 運動能力を得て、組織内でふらふらと動き出す。・・・細胞が動くためのアクチンファイバーを壊したり、再構築して動く。
  • 血管新生因子を放出し、新しい血管を創りだしてがん細胞近くまで引き寄せ、そこから酸素や栄養を得る。がんはVEGF(血管内皮増殖因子)を放出することで新生血管を作る。
  • 血管の壁を溶かす物質を放出して血管内に入り込む。がん細胞はMMPなどのタンパク質分解酵素を分泌して血管の壁を壊し、血管内へ入り込む。
  • 血流に乗って他の臓器や器官へと移動し、そこに付着して増殖を始める。

転移・湿潤しやすいがんは

  • 乳がん・・・肺、肝臓、脳、骨
  • 骨肉腫・・・肺、肝臓、脳、骨
  • 卵巣がん・・・子宮、大網、大腸、腹膜
  • すい臓がん・・・十二指腸、胆管、肝臓、血管、神経、腹膜
  • メラノーマ・・・リンパ節
  • スキルス胃がん・・・腹膜

で、肺や肝臓は毛細血管が網の目のように広がっているので、がん細胞が引っかかって着床しやすいので転移しやすい。

小細胞がんは小さな細胞が密集しているがんで増殖が速く、転移しやすい。非小細胞がんは扁平上皮がんと腺がん、大細胞がんにわけられる。扁平上皮がんは体の外部(表面)を覆っている皮膚や粘膜にできる癌で角質を作る性質がある、腺がんは体の内部の分泌物等を出す組織から発生するがん。大細胞がんは扁平上皮がんと腺がんに属しないもの。

がん死亡数は男女合わせると、肺>大腸>胃>膵臓>肝臓。がんは治療後2-3年以内に再発することが多く、再発しやすいがんは、肝臓がん、すい臓がん、食道がん、膀胱がん、直腸がん。

5年立って再発しなければ一般に完治したとみなされるが、乳がん、腎臓がん、甲状腺がんのように10年以上経ってから再発する例もある。2017時点の5年生存率は胃がん70.4%、大腸がん72.6%、肝臓がん38.5%、肺がん39.1%、乳がん92.7%である。

再発したがんは、悪性度の高い細胞の比率が高まり、手術で取り除いても一般に治らないことが多いので、初回手術後に抗癌剤を投与したり、放射線を照射したりする術後補助療法が行われている。これにより限りなくゼロへ近づけ、あとは人間の免疫細胞にて抑制させる。

かつては細胞傷害性抗がん剤による治療が主流であったが、今般はがん細胞の遺伝子を解析して、患者ごとにがんの原因遺伝子変異を見つけ、その遺伝子変異に効果がある分子標的薬を使用する。

がん治療は、手術療法、放射線治療、化学療法、免疫療法の4本柱。

がんの治療薬

M期→G1期→S期→G2期→M→G1→G0でストップ(図引用元

  • アルカリ化薬・・・細胞周期非特異的。DNAと結合してDNAをアルキル化し、DNA複製やRNA転写を阻害する。細胞周期に依存しない。マスタード類はDNA架橋反応を阻害。ニトロソウレア類はDNAに加えてRNAや細胞内蛋白へも影響を与える。
  • 抗がん性抗生物質・・・G2期を阻害。アントラサイクリン系はDNAと結合し、がん細胞のDNAやRNA合成を阻害する。
  • 白金製剤・・・細胞周期非特異的。DNA鎖と結合し、DNA合成やそれに続くガン細胞分裂を阻害する。CDDPの副作用軽減目的で合成された白金製剤がネダプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン
  • トポイソメラーゼ阻害薬・・・S期を阻害。DNAのリン酸ジエステル結合を切断し、再結合を触媒するトポイソメラーゼを阻害してDNAを傷害する。Ⅰ阻害薬がカンプトテシン類、Ⅱ阻害薬がエトポシド。
  • 代謝拮抗薬・・・S期阻害。拡散やタンパク質合成の過程で生じる代謝物質と類似の構造を持つ化合物で、正常代謝物に変わって核内などに入り込んだり、代謝酵素と競合的に阻害することでがん細胞を傷害する。
  • 微小管阻害薬・・・M期を阻害。ピンカアルカロイドは微小管と結合して微小関係性を阻害し、細胞分裂を停止する。
    タキソ環類は微小管を安定させ、重合を過剰に促進することで細胞分裂を阻害する。
  • 分子標的薬・・・キナーゼ類阻害薬はシグナル伝達を阻害する。
    モノクロナール抗体はがん細胞に対する特異的な抗体として作用(EGFR(上皮細胞増殖因子受容体)を阻害して抗癌作用等)。
    プロテアソーム阻害薬はタンパク質分解酵素複合体であるプロテアソームを阻害しタンパク質を分解する。
    HDACIはヒストン蛋白のアセチル化によるがん抑制遺伝子の活性化。mTOR阻害薬は薬剤耐性に関係するmTORを阻害する。
    免疫チェックポイント阻害剤:T細胞上に発現するPD-1、CTLA-4分子はがん細胞やがん環境内のマクロファージなどの発現しているPD-L1という膜タンパク質と結合して、T細胞の機能にブレーキを掛けてしまう。CTLA-4とペアになるのは抗原提示細胞上のCD80/86分子である。CTLA-4を標的とするモノクロナール抗体には、イピリムマブがあり、PD-1を標的とするモノクロナール抗体には、ニボルマブとペムブロリズマブがある。免疫チェックポイント阻害剤は遺伝子の変異が多いがんに効きやすい。
  • CDK4/6阻害薬・・・通常増殖の必要がなくなるとG1期→S期へ入るのをストップさせるためにG0期にはいるが、サイクリン依存性キナーゼ4/6はG1期→S期への進行を促進させ無限増殖を促す。これを抑制するのがCDK4/6阻害薬である。CDK4/6とサイクリンDの複合体の活性を阻害し、網膜芽細胞種(Rb)タンパクのリン酸化を阻害することにより、細胞周期の進行を停止し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。

大腸がん

大腸がんは、結腸がん(約7割)と直腸がん(約3割)にわけられ、特にS状結腸と直腸にできやすいと言われる。

大腸がんは粘膜表面に発生し、漿膜へ広がっていき、粘膜下層の到達するとリンパ節や血管を通って、他臓器に転移する。

粘膜にできたポリープ(腺腫)ががんに発展するアデノーマ・カルチノーマ・シークエンスと、粘膜に直接がん細胞が発生するデノボがんがある。割合は7:3で前者のほうが多い。

5mm以下のポリープはあまりがん化することはないが、1cmを超えるポリープの約3割はがん化している可能性がある。

大腸がんの進行程度は以下

  • ステージ0:がんが粘膜の中にとどまっている
  • ステージ1:がんが筋層までにとどまっていて、リンパ節転移はない
  • ステージ2:がんが筋層を超えているが、リンパ節転移はない
  • ステージ3a:がんがリンパ節に転移(3個以下)している
  • ステージ3b:がんがリンパ節に転移(4個以上)している
  • ステージ4:腹膜、肝臓、肺などに転移している

大腸がんになると、便の表面に血液(便潜血)やゼリー状のものが付着したり、便が細くなったり、細切れになる。上行結腸がんは水分を多く含むため出血しても気づきにくく、腸管が狭くなっていても詰まりにくいため、発見が遅れる。 下行結腸がんやS状結腸がんでは、がんにより内向が狭くなり、便秘や間欠的な下痢等の便通異常が見られる。

がんが粘膜下層まで到達している場合5~15%以上の確率でリンパ節転移が起こっている。この転移を予防する目的でリンパ節郭清(D1~D3)を行う。日本では側方リンパ節を切除する自律神経温存側方郭清が標準治療(7割手術単独、3割手術+CRT)となっている。

補助化学療法に推奨される抗がん剤として、

  • 5-FU+レボホリナート
  • テガフール・ウラシル+ホリナート
  • カペシタビン
  • 5-FU+レボホリナート+オキサリプラチン(FOLFOX療法)
  • カペシタビン+オキサリプラチン(CapeOX療法)
  • テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合(S-1)

が推奨。

血液のがん(白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫)

白血球には顆粒球(好中球・好塩基球・好酸球)、単球(マクロファージ)、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)が含まれている。

白血病は急性(骨髄性/リンパ球性)と慢性(骨髄性/リンパ球性)に分けることができる。急性と慢性では病期の進行スピードが異なり、前者は週~月単位、後者は年単位で進行する。急性以外は60歳以上の高齢者に多く起こる。

  • 急性骨髄性白血病(AML)・・・70%
  • 急性リンパ性白血病(ALL)・・・10-20%
  • 慢性骨髄性白血病(CML)・・・10-20%
  • 慢性リンパ性白血病(CLL)・・・5%以下
  • 悪性リンパ腫
  • 多発性骨髄腫

骨髄の造血幹細胞はリンパ系幹細胞と骨髄系幹細胞へと分化した後、リンパ系幹細胞はT細胞、B細胞、NK細胞へ分化し、骨髄系幹細胞は骨髄芽球、血小板、赤血球へ分化し、うち骨髄芽球は顆粒球、単球に分化する。

急性白血病

急性白血病は骨髄の中で白血球のもとになる骨髄芽球ががん化(遺伝子変異)したもので、造血細胞(白血病細胞=白血球の元になる骨髄芽球やリンパ芽球に類似した芽球様細胞(赤血球や血小板とは有核である点やサイズの点で異なり、血液分画でも白血球の区分に入る))が増殖し、正常な造血細胞が減ってしまい、正常な白血球の減少(感染症、発熱)、赤血球減少(貧血)、血小板減少(易出血)が起こる。

つまり自覚症状があるということ。

骨髄の芽球の割合が20%以上、血液でも通常見られないはずの芽球が認められれば白血病の可能性が高い。

この未熟な芽球様な急性白血病細胞は分化能力がなく、芽球のまま増殖するため、骨髄が単一な大きさの白血病細胞で埋め尽くされて、他の幹細胞や好中球、リンパ球といった血液細胞たちは減る。

治療は体内の白血病細胞を根絶する、抗がん剤治療と造血幹細胞移植の2つがある。

抗癌剤治療は寛解導入療法(抗がん剤7日間)を行い白血病細胞を1/10以下にし、地固め療法(抗がん剤1ヶ月に1回、3~4回コース)を行い、白血病細胞を100万子以下にする。残りは自分の免疫で処理することになるが再発することももちろんある。

造血幹細胞移植は他のドナーから、移植を行う直前に骨髄、末梢血から提供されるか、冷凍保存の臍帯血を提供されるかで行われる。ドナーはHLA(白血球の血液型)が一致している血縁者が第一候補、いないなら骨髄バンクへ、それでもいないなら臍帯血バンクへ。骨髄移植はHLA一致していたとしても30%に死のリスク。

移植する前に大量の抗癌剤と放射線の全身照射によって体中全ての血液細胞をゼロにしてから、ドナーの造血幹細胞を移植する。対象は体力のある55歳以下の方。高齢者は抗がん剤量を減量し根絶は目指さず、ドナーのリンパ球が白血病細胞を破壊することを期待する。

リスクは感染症リスク→抗生物質にて対処、GVHD(ドナーのリンパ球と患者の皮膚や肝臓、腸との間で起こる免疫反応)→ステロイドで対処。

慢性白血病

慢性白血病は骨髄の中で造血幹細胞ががん化して白血病細胞へとなるが、急性白血病細胞のように単一な未分化の芽球様細胞ではなく、芽球様細胞が分化能を持っているので、それらが成熟・分化した好中球等の顆粒球、リンパ球も含めた白血球細胞が骨髄内を埋め尽くす。

がん化した芽球から成熟した血液細胞は見た目も機能も正常であるので、慢性期(5-6年)は自覚症状がほぼないまま進行する。

白血病細胞は主として白血球へと分化し、血液中へも移行するため、血液中の白血球数が増加することや、脾腫による腹部膨満症状がこの時期の判断材料。

その後、移行期に入ると白血病細胞が悪性化し、がん化した芽球様細胞は成熟しないまま増殖する。骨髄の芽球が20%を超える程度を堺にして急性転化して急性期に入って、急性白血病様の経過をたどる。

急性白血病から慢性白血病へと移行することはないが、慢性白血病が急性転化して急性白血病へと移行することはある。つまり、急性と慢性の意味が本来の意味と少し異なる点に注意を要する。

検査には以下の様なものがある。

  • 血液検査・・・血液中の白血球を調べる
  • 骨髄検査・・・骨髄液をとって調べる
  • 染色体検査
  • 遺伝子検査

急性白血病の原因は殆どが原因不明で、放射線、抗癌剤治療の副作用、先天性、ウイルス感染他様々による染色体異常。

慢性骨髄性白血病の原因は、造血幹細胞のABL遺伝子(9番染色体)とBCR遺伝子(22番染色体)の相互転座により、22番染色体がBCR-ABL融合遺伝子(フィラデルフィア染色体)となって、その遺伝子がBCR-ABLという異常なタンパク質を作り、これにエネルギー物質がくっつくと白血病細胞が無限に増殖する。

慢性リンパ性白血病の原因は不明で原因となる遺伝子も判明していない。

ABL1はチロシンキナーゼ活性を持ち、チロシンにPを付加する→これが相互転座によって暴走すると細胞増殖・生存延長が起こり、CMLが発症する。分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)はBCR-ABL蛋白にエネルギー物質がくっつくのを阻害する。

  • グリベック(イマチニブ)・・・第一世代
  • タシグナ(ニロチニブ)・・・第二世代
  • スプリセル(ダサチニブ)・・・第二世代
  • ボシュリフ(ボスチニブ)・・・第二世代
  • アイクルシグ(ポナチニブ)・・・第三世代

病巣を作る他のがんと違って化学療法がよく効く。イマチニブの5年生存率は95%。分子標的薬は白血病の幹細胞自体には効かないのでチロシンキナーゼ阻害剤だけでは駆除できない→ずっと飲み続ける必要がある。中止で6割は再発。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、リンパ性白血病と本質的に差はないが、骨髄での芽球が25%以下で増殖が主にリンパ節で行われるものを悪性リンパ腫としている。骨髄内での増殖というよりリンパ組織で増殖し腫瘍化したというニュアンス。

リンパ節にホジキン細胞を認めるホジキンリンパ腫とそれ以外のリンパ腫(非ホジキンリンパ腫)に分類され、後者が90%を占める。

非ホジキンリンパ腫には、

  • 濾胞性リンパ腫・・・やや多い。治りにくい
  • MALTリンパ腫・・・やや多い。ピロリ菌の感染があれば除菌→これだけで7-8割は治癒。
  • マントル細胞リンパ腫・・・治りにくい
  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・・・最も多い。6-7割は治癒する。
  • 末梢性T細胞リンパ腫・・・治りにくい
  • 成人T細胞白血病/リンパ腫・・・治りにくい
  • バーキットリンパ腫

等が該当し、進行スピードにより分類されている(リストでは上の方が遅く、下に行くほど早い)。

症状としては首、鼠径部、腋窩などのリンパ節の腫脹、

標準治療はCHOP療法(シクロフォスファミド点滴、ドキソルビシン、オンコビン、プレドニゾロン)を3週ごと、放射線、自家移植(患者本人の造血幹細胞を使う。65歳以下)が用いられる。

自家移植は、予めG-CSFを投与して造血幹細胞を増やしたあと、血管から造血幹細胞を採取してそれを凍結保存しておき、白血病細胞を大量の抗癌剤で根絶し、凍結保存しておいた造血幹細胞を点滴で戻す治療。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、CHOPに加えて、抗CD20抗体であるリツキサン(Bリンパ腫細胞のCD20抗原に結合して、自己の免疫細胞の標的とし、B細胞の増殖を抑える)を使用する。

多発性骨髄腫

ゆっくり進行し、治りにくい、骨が痛む血液のがん。

通常、リンパ球の中のB細胞が成熟して免疫グロブリンを産生する形質細胞になり骨髄に戻って待機しているが、多発性骨髄腫ではこの形質細胞が骨髄で腫瘍化して増殖し、破骨細胞の働きを強め、骨芽細胞の働きを弱めたり、造血幹細胞を阻害するので他血球成分を減少させる。

骨髄腫の細胞も抗体は作るが、それらはM蛋白とよばれ、抗体としては働かない。M蛋白は腎尿細管に詰まって腎不全を引き起こしたりする。

症状は造血抑制による貧血や白血球減少、免疫低下による感染症、腎障害による浮腫、骨破壊による骨の痛みや骨粗鬆症が起こる。 治療は、症状が現れない場合は経過観察、65歳未満は化学療法(3-4ヶ月)を始めとして、造血幹細胞の自家移植、放射線、ビスホス製剤等、65歳以上は化学療法を9-12ヶ月で行う。

薬は分子標的薬であるプロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ等)と多発性骨髄腫治療薬(デキサメタゾン、レナリドミド他)の併用。

プロテアソームの機能:β1(caspase-like cleaves after acidic AA)、β2(trypsin-like Cleaves after basic AA)、β5(chymotrypsin-like Cleaves after hydrophobic AA)。シグナル伝達に関わるタンパク質(基質はβカテニン、kBq、p53他)の分解。

プロテアソーム阻害のイキサゾミブはβ5(β1)サブユニットを強く抑制するが、β5サブユニットから解離し易いため、赤血球へのトラップが少ない(赤血球にはプロテアソームが結構あるため)、腫瘍組織以降性が高い(ボルテゾミブの10倍以上)、p53変異による新生βサブユニット抑制効果が高い、Rdと相乗効果を示す等の特徴がある。

(参考:白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫について白血病、きょうの健康)

胃がん

ステージ分類

N0
リンパ節転移がない
N1
リンパ節転移が1-2個
N2
リンパ節転移が3-6個
N3
リンパ節転移が7個以上
M1
遠隔転移を認める
T1a(M)
胃の粘膜に限局している
ⅠAⅠBⅡAⅡB
T1b(SM)
胃の粘膜下層に達している
ⅠAⅠBⅡAⅡB
T2(MP)
胃の筋層まで達している
ⅠBⅡAⅡBⅢA
T3(SS)
胃の漿膜下層まで達している
ⅡAⅡBⅢAⅢB
T4a(SE)
胃の外側表面にがんが出ている
腹腔に露出している
ⅡBⅢAⅢBⅢC
T4b(SI)
胃の外側表面にがんがでている
直接他の臓器に湿潤している
ⅢBⅢBⅢCⅢC

定型手術(胃2/3以上切除+D2郭清)を中心として、内視鏡、腹腔鏡下手術、縮小手術、拡大手術、術前・術後化学療法を実施。

胃がんが粘膜内にとどまっている分化型、2cm以下、潰瘍を伴わないもの(ステージⅠAの一部)は内視鏡切除、それより進行度の高いステージⅠA~ⅢCは外科治療の適応。手術後には補助化学療法(抗がん剤治療)を行うこともある。

切除不能の局所進行胃がん、遠隔転移を伴う胃がん(Ⅳ)は抗癌剤治療による緩和的化学療法の適応。

補助化学療法はオペ後の再発を抑える目的で行われる。手術単独で40%が再発するが、補助化学療法を行うことで40%中10%の再発が防げる。再発した場合の治癒率は限りなくゼロに近いことことから推奨。 術後補助化学療法では、S-1単剤を1年間継続、XELOX療法(カペシタビン+オキサリプラチン)を6ヶ月継続、場合によりSOX療法(S-1+L-OHP)を実施。

緩和化学療法は、がん細胞表面のHER2蛋白の有無で区別される(陽性15%、陰性85%)。

HER2陽性の場合、カペシタビンまたは5-FU+シスプラチンまたオキサリプラチン+トラスツズマブの3剤併用が推奨。腫瘍の増大がないならそのまま、効果がない場合二次治療として、DTXまたはPTXまたはCPT-11の単剤、もしくはPTX+RAMの併用。

HER2陰性の場合、S-1またはカペシタビン+シスプラチンの2剤併用が推奨。効果がない場合の二次治療はHER2陽性の場合と同じ。

子宮頸がん

子宮頸がんの95%はHPV(人パピローマウイルス)感染が原因で、特にHPV16型が全体の半分を占め、ついで18型が10~20%を占める。

HPVワクチン(2価:サーバリックス、4価:ガーダシル、9価:シルガード9)の定期接種(公費)の対象は12~16歳の女性小学6年~高校1年相当の女性で、持続期間は10年以上(抗体が持続)とされる。

乳がん

女性医療・更年期については別ページにて。

サブタイプ分類 ER PR HER2 Ki-67値 治療法
ルミナルA型陽性陽性陰性ホルモン療法
(化学療法)
ルミナルB型(HER2陰性)陽性or陰性弱陽性or陰性陰性ホルモン療法
化学療法
ルミナルB型(HER2陽性)陽性陽性or陰性陽性低~高ホルモン療法
化学療法
分子標的治療
HER2型陰性陰性陽性-分子標的治療
化学療法
トリプルネガティブ陰性陰性陰性-化学療法

乳がん細胞の核に現れる女性ホルモン受容体として、ER(エストロゲン受容体)とPR(プロゲステロン受容体)がある。

HER2はがん細胞表面に発現するタンパク質の一種で、多いと増殖が促され、再発のリスクも高い。

Ki67はがん細胞の増殖能、高いと増殖スピードが早い。

乳がんの術前薬物療法は、腫瘍が小さくなる、それにより乳房温存手術の適応が増える、化学療法の効果が予め確認できること等により推奨されている。術前薬物療法により2割弱はpCR(病理学的完全消失:がん細胞の消失)が得られたという。 術後の再発予防に術後薬物療法ももちろん行われる。

ルミナルA型

ルミナルA型は、乳がんの約6割を占め、予後は最も良い。

手術による切除(部分切除は4割)後に化学療法(抗がん剤)を行ってその後ホルモン療法へ移行する場合と、化学療法を行わないでホルモン療法へ移行する場合がある(オンコタイプDX検査=がん遺伝子を調べる検査等で判断)。

ホルモン療法のみの場合、閉経前の人は抗エストロゲン剤(タモキシフェン等)を5~10年使用する。閉経後はアロマターゼ阻害剤を使用する。アロマターゼ阻害薬はエストロゲン量が減るので骨粗鬆症のSEに注意。

化学療法をした閉経前の人はエストロゲンの分泌を抑えるLH-RHアゴニスト製剤を5年間併用する。 10年以上経ってから再発する晩期再発も有り。

ルミナルB型

ルミナルB型のHER2陰性では、リンパ節転移が多かったり、しこりが大きく部分切除を希望する場合のみ化学療法を術前に行う。それ以外は手術が先が一般的。

ルミナルB型のHER2陽性では、化学療法と分子標的薬に加えて、内分泌治療を行う。

HER2型

HER2型は、乳がんの1~2割を占める。 術前化学療法としてで腫瘍を小さくしてから部分切除、もしくは術後に1年ほど化学療法を行う。

HER2標的薬剤として、トラスツズマブやラパチニブ、ペルツズマブを、抗がん剤としてアントラサイクリン系とタキサン系を併用して治療する。

トリプルネガティブ型

トリプルネガティブ型は乳がんの1~2割を占める。

ホルモン受容体とHER2が陰性でそれらに拮抗する薬を使用できないため、抗がん剤が主体となる。術前または術後の化学療法としてアントラサイクリン系とタキサン系の順次投与(FEC療法、AC療法、EC療法等)が行われる。

トリプルネガティブ乳癌の周術期治療と1次治療におけるICIの活用(日経メディカル)

FEC療法の点滴では、生食→吐き気止め→エピルシン投与→シクロホスファミド投与→フルオロウラシル投与→生食の合計2時間を、3週間毎に4~6サイクル繰り返す。

以下乳がんの薬

  • アリミデックス(アナストロゾール)・・・アロマターゼ阻害。閉経後乳がん
  • アロマシン(エキセメスタン)・・・アロマターゼ阻害。閉経後乳がん
  • フェマーラ(レトロゾール)・・・アロマターゼ阻害。閉経後乳がん
  • ノルバデックス(タモキシフェン)・・・SERM(エストロゲン受容体拮抗薬)。乳がん。SERMなので乳腺と子宮には抗エストロゲン作用、骨と脂質代謝にはエストロゲン作用を示す。
  • フェアストン(トレミフェン)・・・SERM(エストロゲン受容体拮抗薬)。閉経後乳がん
  • フェソロデックス(フルベストラント)・・・エストロゲン受容体拮抗薬。閉経後乳がん
  • ヒスロンH(メドロキシプロゲステロン)・・・黄体ホルモン。乳がん、子宮体がん
  • ゾラデックス(ゴセレリン)・・・GnRHアゴニスト。子宮内膜症、閉経後乳がん、前立腺がん
  • リープリン(リュープロレリン)・・・GnRHアゴニスト。子宮内膜症、子宮筋腫、閉経後乳がん、前立腺がん
  • ゴナックス(デガレリクス)・・・GnRHアンタゴニスト。前立腺がん
  • チオデロン(メピチオスタン)・・・エストロゲン受容体拮抗薬(競合阻害)。乳がん
  • プロセキソール(エチニルエストラジオール)・・・エストロゲン製剤。前立腺がん、閉経後末期乳がん。
  • プロスタール、ルトラール(クロルマジノン)・・・黄体ホルモン製剤。無月経、前立腺がん、前立腺肥大

卵巣がん

  • 白金製剤・・・DNAの二本鎖切断を増加させる。しかし、卵巣癌 (高悪性度漿液性癌) 患者の約50%では、BRCA やATM、RAD51などが関わる修復経路に異常があり、二本鎖切断の修復を十分に行えず、プラチナ感受性を示すと考えられる。
  • リムパーザ(オラパリブ)・・・ポリアデノシン5'二リン酸リボースポリメラーゼ(PARP)の1、2及び3に対して強い阻害作用を有する。
    PARPを阻害することによって一本鎖切断を担う塩基除去修復が働くのを妨げる 。修復されないDNAの一本鎖切断は、DNA複製の過程で二本鎖切断に至る。相同組換えができない卵巣癌細胞では、二本鎖切断を修復できずに細胞死に至る。
    PARP酵素には17種類のファミリー分子があるが、DNA一本鎖切断修復に関するのはAPRP-1とPARP-2のみ。

皮膚がん

皮膚がんは、病変部位により悪性黒色腫(メラノーマ)、有棘細胞がん、基底細胞がん、乳房外パジェット病に分類できる。

メラノーマは、 メラニン色素を産生する色素細胞(メラノサイト)ががん化した腫瘍。 皮膚の他にも、鼻腔、口腔、食道、直腸、肛門、結膜、外因・膣などの粘膜、眼のぶどう膜などにも発現する。

  • Ⅰ期:原発巣のみでがんの厚みが1mm以下か2mm以下で潰瘍なし
  • Ⅱ期:1mmを超え潰瘍があるか2mmを超える
  • Ⅲ期:リンパ節転移がある
  • Ⅳ期:別の臓器に転移

に分類される。

Ⅰ期とⅡ期では、部位により植皮手術、場合によりセンチネルリンパ節生検、Ⅲ期では切除不能であれば薬物療法とリンパ節郭清、術後に4-5割再発のため予防としてインターフェロンの術後療法、Ⅳ期で薬物療法による緩和ケア。 ほくろと区別がつきづらいが、形が左右非対称、辺縁がギザギザ、色調に色ムラ、直径が6mm以上等の鑑別ポイントに着目して見分ける。

有棘細胞がんは 紫外線暴露を原因として日光角化症からの進行病変として知られる。頭、顔、手の甲、前腕等。 肉芽腫(毛細血管拡張性肉芽腫)との鑑別

基底細胞がんは ほくろににている。9割が頭頸部にできる。

乳房外パジェット病は 主として外陰部に生じる。乳房にできるもの以外が対象。股部白癬、陰部湿疹との区別。

治療は手術が第一選択、根治不能なメラノーマに対する薬物治療として、BRAF遺伝子異常がある場合はBRAF阻害薬とMEK阻害薬の併用(薬剤耐性予防)または、抗PD-1抗体の使用。BRAF遺伝子変異がない場合は抗PD-1抗体の使用が第一選択、抗CTLA-4抗体が第二選択。

  • オプジーボ(ニボルマブ)・・・抗PD-1製剤。点滴
  • キイトルーダ(ペムブロリズマブ)・・・抗PD-1製剤、点滴
  • ヤーボイ(イピリムマブ)・・・抗CTLA-4製剤、点滴
  • ゼルボラフ(ベムラフェニブ)・・・BRAF阻害薬、錠剤
  • タフィンラー(ダブラフェニブ)・・・BRAF阻害薬、カプセル
  • メキニスト(トラメチニブ)・・・MEK阻害薬、錠剤

肺がん

肺がんは小細胞肺がんと非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)に大別される。うち非小細胞肺がんが80%を占める。

小細胞がんは喫煙との関連性が高く、中枢側の気管支から発生することが多い。増殖速度が早く悪性が強い、抗癌剤による反応性が高いので化学療法が推奨される。多くは再発するため予後は不良。

非小細胞がんの中では腺がんが多く、抗がん剤に低感受性、放射線治療の適応がないⅢ期~Ⅳ期は化学療法、特に分子標的薬を用いるケースが多い。

術後病理病期Ⅱ/ⅢA期の完全切除例に対しては、術後にシスプラチンと従来の抗癌剤の併用療法、腫瘍径2cmを超える術後病理病期Ⅰ期の完全切除例に対しては術後にUFT(テガフール・ウラシル配合剤)療法が推奨されている。

Ⅳ期の非小細胞肺がんでは根治療法の適応とはならず、延命をはかることであり、症状の緩和を目的として使われる薬剤が分子標的薬となる。分子標的薬の適応は主として、手術不能又は再発非小細胞がん。効果を示す反面、耐性獲得腫瘍が問題であり、7次治療とかまで移行するケースは少なくない。

非小細胞肺がんでは、非扁平上皮癌と扁平上皮癌で治療がやや異なる。

扁平上皮がんでは、CD8陽性T細胞表面の活性化抑制チェックポイント分子であるPD-1にがん細胞のPD-L1が結合するのを抑制する分子標的薬を用いる。

非扁平上皮がんでは、遺伝子スクリーニングにおいてEGFR遺伝子変異陽性、ALK遺伝子転座陽性、ROS1遺伝子転座陽性、PD-L1陽性、またはそれらの組み合わせによって対応する分子標的薬を用いるなど治療が異なる。

  • ザーコリ(グリゾチニブ)・・・ALK-TKI。ALK、MET、ROS1受容体チロシンキナーゼに対するATP競合性の傾向低分子チロシンキナーゼ阻害薬、下流のERK、AKT、STAT3など細胞増殖・伸展に関与する経路を抑制する。
  • アレセンサ(アレクチニブ)・・・選択的ALK阻害薬。グリゾチニブの約10倍のALKに対する親和性。グリゾチニブ耐性ALK陽性肺がんに用いる。

EGFR遺伝子変異陰性の際は、白金製剤(CDDP)とPTX、DTX、GEMなどのの併用が標準で、これらが無効の際はDTXの単剤投与。葉酸代謝拮抗薬のペメトレキセドは進行した非扁平上皮癌に高い効果。

肺がん確定診断までの流れ

自覚症状(咳、痰、発熱、息苦しさ、同期、胸の痛み等の呼吸器症状)→胸部X腺、喀痰細胞診→胸水、陰影確認、細胞診で悪性細胞+→CTでガンの大きさや場所、リンパ節転移の有無を調べる→気管支鏡検査で気管・気管支の状態を観察し、検査のための組織や細胞を採取→MRIで他の部位の転移状態確認→FDG-PET/CT検査で全身のがん細胞を検出→確定診断。

肝臓がん

肝臓がんの約80%がHCV、約15%がHBVの持続感染に起因する。

治療は、肝切除、経皮的エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓療法、化学療法が主。

その他のがん

骨腫瘍は骨に発生したがん、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫に分類される。肉腫は非上皮性細胞由来の結合組織細胞に発生するがん。

神経内分泌腫瘍は、ホルモン産生細胞から発生する腫瘍。

神経膠腫は脳腫瘍と脊髄腫瘍のうち、グリア細胞由来のもの。膠芽腫は脳の神経膠腫の中で最も悪性。

褐色細胞腫も神経芽腫もカテコラミン産生細胞である副腎髄質や交感神経神経節から発生する腫瘍。違いは前者は内分泌系腫瘍、後者が交感神経系腫瘍とのこと。

尿路上皮癌は、膀胱癌、腎盂・尿管癌が該当。腎臓癌は尿細管の細胞ががん化したもので尿路上皮癌とは別。ウィルムス腫瘍は小児の腎腫瘍。

頭頸部癌は上顎癌、舌癌、口唇癌、咽頭癌、喉頭癌、口腔癌等が該当。

小児固形腫瘍(ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、神経芽腫、網膜芽腫、胚芽腫、腎芽腫等)

胚細胞腫瘍は精巣腫瘍、卵巣腫瘍、性腺外腫瘍が該当

絨毛上皮腫は、胎盤を構成する絨毛の悪性腫瘍。妊娠性が主。

(参考・引用文献:クレデンシャル2016.5、2017.11、2017.2胃がん、2017.5乳がん・皮膚がん、2017.4肺がん、治療薬ハンドブック2017、武田Webセミナー2017.11.6、図引用:クレデンシャル2017.11)

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